建築設備と配管工事(東京工芸大学水谷先生記事)2017・5 掲載のお知らせ
建設設備と配管工事2017.05 一部引用-------------------------------------特集:耐震支持金物の現状東京工芸大学 水谷国男
2011年3月の東日本大震災や2016年4月の熊本地震の非木造建物被害(津波による被害を除く)を検証すると、建物の倒壊や構造的にな損傷はまれであり、特に1981年の建築基準法改正(新耐震基準)以降に新築されたり耐震補強された非木造建物は、構造的には概ね健全であった。
しかし、それにもかかわらず、体育館やホールが避難所として使えなかったり、地震後長期間に渡って使用できない建物が数多く発生した。構造的に健全であるにもかかわらず建物を使用できない理由は、天井や壁・ガラスなどの非構造部材が損傷して安全性が保てなくなったり、給排水設備や防災、空調設備などが損傷して居住環境や生産環境が維持できなくなったためである。
このようは背景から、建物の地震対策は、建築躯体の耐震性から非構造部材や建築設備の耐震性へと重点が移りつつある。例えば天井は、2014年4月の国土交通省告示第771号他天井脱落対策に係る一連の技術基準告示で、特定天井の設計用地震力が従来の1.0Gから2.2Gに引き上げられた。
一方で建築設備については、建築設備耐震設計・施工指針(センター指針)2005年版で既に耐震クラスSの上層階の設計用地震力を2.0Gとするなど、特定の施設や重要な設備は一般の天井よりも高い耐震性を有するように規定されている。
しかしながら、一般の施設の一般の機器(防振支持機器を除く)は耐震クラスB(中間階以下の設計用地震力が0.6G以下)も許容されており、また、100kg以下の機器は「設備機器の製造者の指定する方法で確実に行えばよい」とされている。このため、施工コストとの兼ね合いから設備機器や配管等の耐震装置が十分とは言えない建物も多く建設され、その結果、地震時に多大な損害を被る例が後を絶たないのである。
建築設備は、多数の機器や器具が配管やダクト、電線などでつながって機能を発揮しているので、その一部が損傷しただけでも全体の機能が失われることが多い。また、機器や配管などは、天井裏やシャフト内などに隠蔽されていることが多いため損傷個所の発見や修復のためには、天井などの内装材を撤去するなど、大規模な工事となり、地震後の修復に時間とコストがかかる。
従って、今後は100kg以下の軽量機器に対しても、特定天井で求められるような耐震性能の検証が必要になると考えられる。このような動きに対応するためには、軽量機器の吊り支持部材として多く用いられている支持金物類の性能と限界を知り、地震時に応力が集中して損傷する部材がないか、また、想定以上の地震力が作用したときに壊滅的な被害とならないかどうかをチェックする必要がある。
本特集が今後の設備機器等の耐震性能向上に役立つことを期待します。
【筆者紹介】 水谷国男 東京工芸大学 工学部 建築学科 建築設備デザイン研究室 教授 |
建設設備と配管工事2017.05 一部引用--------------------------------------